【コラム】スポーツ選手のストレスとケガ

第26回 潜在意識・顕在意識・脳の働き方

吉備国際大学社会科学部学部長・教授
公益財団法人日本健康スポーツ連盟認定プロフェショナルトレーナー
一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長

竹内 研

「潜在意識」という言葉も、私達は日常、色んな場面で、あちこちで口にしたり耳にしたりしていますね。身近な言葉になってます。
片や、例えば今自分がこんな事を思っているとか感じているというのは顕在意識でもって思ったり感じたりしている訳です。こちらは自分自身で自覚できる。
潜在意識は自覚できなくて、顕在意識は自覚できるから、顕在意識だけが心の働きだと思ってしまっている。もちろん、時々は自分が気づかなかった心の状態に気づくこともあるけど。
自分のアタマとココロに浮かぶ事がすべてと思って、生きている。
それらをもとに、色んな事を考えたり、そして行動したり。

ところが、脳科学では、私達の脳は、私達自身が思ったり感じたりしている何倍もの刺激や情報を、脳は四六時中受け取っている、キャッチしているというのです。私達は自分で気づかない内に、自分が気づく何倍もの現象をキャッチしていて、そしてそれらに影響されているらしい!
そう言えば、サブリミナル効果ってのがありましたね。気づかない内に、脳に入力されてしまっているあれです。その結果、私達の選択行動が決まってしまうという。
生理学的にも、例えば内臓の状態はリアルタイムで、自律神経を通じて、脳にインプットされています。筋肉も同じです。そのインプットされる情報によって、脳は自動的に働き、また影響も受けています。

こんな風に、最新の脳科学や認知科学は、自分が解っていると思っている事だけじゃなくて、その何倍も気づくことすらできないでいる事が、常に自分の周り、自分が関わっていることの中にあるんだと、教えていますが、こうも言えますね。
自分が何かをやった時に、どうしてそうしたかという理由は、自分が思っている理由ではないんだと。
・・・とは言われても、普通は「えっ、本当かなぁ?」と思ってしまいますね。
これが以前にも書きましたが、スコトマつまり心理的盲点。
私達の脳は、自動的にもっと言えば勝手に、受け取る情報を選んでいる。選んでいるのは、脳の脳幹にある、網様体賦活系(RAS)。
もし、悩みや問題を解決する良い情報があったとしても、RASの働きによって気づかなくなってしまっているというのが、日常的だというのです。

だとしたら、なんとまあもったいない事でしょう。

じゃあ、何故RASは勝手に、入力情報を取捨選別しているのでしょう。
それは私達の記憶に基づいて、取捨選別しているというのです。

ははあ、それでか。例えばアスリートでまだ全国大会出場経験の無い選手が、なかなかその壁を破れないのは。
全国大会を目指すアスリートはたくさんいても、実際に全国大会に出場できるのはその何十分の一、いやいや何百分の一、何千分の一。出場経験の無い選手は、全国大会出場の記憶が無い。だから、その選手のRASは、身の回りにある全国大会出場のための方法や情報をシャットアウトしているんだな。

実は、こうした脳の働き方(機能)を知って、それを上手く活用して、自分が変革して、その結果、現実に起こる状況を変えている人達は、世界中にたくさんいるみたいなんです。

2021-12-08