【コラム】スポーツ選手のストレスとケガ

第19回 脳と身体運動との関係、パラダイムシフト!

吉備国際大学社会科学部学部長・教授
公益財団法人日本健康スポーツ連盟認定プロフェショナルトレーナー
一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長

竹内 研

脳は人間の運動を考える時に、その中心であるという認識は、近年になってようやく、認知されてきた様に思います。
それまでは、筋肉とか骨格とかが中心で、いわゆる車で言うと、エンジンに関する事が中心でした。
脳と身体運動との関係は、まだまだその解明の端緒についた段階と言えるでしょうが、それでもこれまでとは違った扉が開けつつあります。
トップアスリート育成においても、新しいパラダイムが構築されてきています。そして、この新しいパラダイムの方が、当然ながら、効率的・効果的と言えます。正しく、パラダイムシフト!

前にも書きましたが、これらの新しいパラダイムで観ると、トップアスリートの成り立ちが、遥かによく理解できます。そして、同じことは、健康と運動の関係を考える時も、さらに健康と施術の関係を考える時も、同様です。

例えば、背骨の重要性は、こちらも時を経るごとに注目されてきていますが、背骨と脳の関連性には、切っても切れない深い繋がりがあります。

背骨に負けず劣らず、脳と深い関係があると解ってきているのが、皮膚です。
先般も「0番目の脳」というテーマで、TVで特集番組が放送され、書籍も出版されています。
「皮膚って3番目の脳って言われてきたのでは?」と疑問を感じられる方もおられるでしょう。その通りなのですが、皮膚の科学が進歩してくるにつれて、そもそも脳という存在を形成し、脳に根底的に影響を与えていることが明らかになるにつれて、こうした捉え方がされるようになったのでしょう。

本当に皮膚は脳に対して、絶大な影響力を持っている様です。ですから、脳に何がしか働きかけようとする際は、皮膚に何らかの刺激を与えることが、非常に有効であるのです。
こうした脳の機能や、その脳に対する皮膚の影響力の大きさは、古来より人間が培って伝承してきたヨガや今で言うところの気功(気功という呼称は近年になって)の持つ効力の裏付けともなるものだと考えています。
さらに、身体運動が有する脳との連関性を形成するものだとも。
身体運動は精神性とも深い関係性を持ってきたことが、科学的にも納得できるのではないでしょうか。

心身一元論。言い換えれば東洋的身体論。

さらに、最先端の現代科学の、興味深すぎるお話ですが・・・この皮膚の脳への影響を担っているのは、皮膚自体の機能に加えて、皮膚に存在する細菌叢(皮膚常在菌)の働きだというのです。特に皮膚の乳酸菌。これが実に大きな役割を果たしていると。
世界マイクロバイオータ学会などでの研究成果です。マイクロバイオータとは、細菌叢。

人間の健康や心身の機能の生物学的なベースは、ミトコンドリアやマイクロバイオータだということが、もはや解明されています。
ミトコンドリアやマイクロバイオータの状態によって、健康や心身の働きが形成されている!

時代は進むものですね。スポーツやトレーニング、施術の効果について考える時は、ミトコンドリアやマイクロバイオータについての知識が無いと、充分理解することができない。そういう時代なんですね。

2021-09-22