【コラム】スポーツ選手のストレスとケガ
第23回 「競技力の構造」の解明とは
吉備国際大学社会科学部学部長・教授
公益財団法人日本健康スポーツ連盟認定プロフェショナルトレーナー
一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長
竹内 研
世の中には「てっきり〇〇〇〇〇と思っていたけど、そうじゃなかったんだ。」ということがたまにありますね。
アスリートに関してですが、競技力はどんな要素から成り立っているか。
言うなれば競技力の中身・仕組みと言っても良いでしょう。硬く表すと、競技力の構造ということになりますが。
実は解っていないのです。
こう言うと「そんなことはないだろう。マスコミなどで、その専門家や評論家が、色々と説明したりしているじゃないか。」と思われる方々は多いでしょう。
それに「現実にたくさんのコーチ・指導者が、選手を指導しているじゃないか。彼らは何を指導しているというのか?」という声も聞こえてきそうです。
多くのコーチ・指導者が指導しているのは、一言で言うと、彼ら自身が経験してきた内容プラスアルファです。
言い換えれば、彼らの主観が大半です。
例えば「あなたが指導している種目の競技力で、重要なのは何ですか?」と質問してみたら、その答えは様々でしょう。重視しているポイントが色々だということです。
そして、確率的に少数の限られた選手が、そうした指導の甲斐もあって、トップアスリートの域に到達していきます。
確率的に少数です。
もし、科学的にアスリートの競技力が解明されているなら、もっと高い確率で、トップアスリートが誕生しているでしょう。
でも、技術の指導はもとより、筋トレやメンタルトレーニングなど、実践させている指導者も今や多くなってきています。筋トレやメンタルトレーにングは科学的なものじゃないのか? もちろんそれら自体は科学的に研究されたものです。しかし、競技力の要素に過ぎないのです。
例えば、筋トレをしっかりやったけど、なんだか動きが鈍くなった。そんな事例もたくさん。
メンタルトレーニングを日々熱心にやったけど、またまた本番で力が出せなかった。そんな事例もたくさん。
何十年も前に、日本のスポーツ科学の扉を開いた、猪飼道夫先生が提唱した、競技力を説明する式があります。
競技力は体力・精神力が技術を通して発揮されると。
もちろんこの概念は間違ってはいませんね。
しかし、人間のパフォーマンスである競技力の構造は、想像を超えた複雑さ・緻密さ・相互関係そして深遠さをもっていました。
実は、この競技力の構造を解明した研究・理論というのが、既に日本において、示されていたのです。