【コラム】スポーツ選手のストレスとケガ
第22回 「間脳」というメカニズム
吉備国際大学社会科学部学部長・教授
公益財団法人日本健康スポーツ連盟認定プロフェショナルトレーナー
一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長
竹内 研
「脳」に関する話題が、あちこちで飛び交ってきています。脳科学がどんどん進化してきて、その研究成果が公にされてきていますから。
もはや、健康やスポーツや施術などを考える場合も、脳を視野に入れないのは、はっきり言って時代遅れ!
つまり、脳の事が随分解ってきて、スポーツのことを考える時に参考にできる脳情報も増えてきていますから。
かと言って、脳の実態を解明し尽くすのは、まだまだ遠く先のことです。脳は宇宙と並び称されるほどの、未知なる領域と言われていますね。
そんな脳ですが、思考や理性を司る大脳新皮質と、感情の座である大脳辺縁系と、生きていくための機能のほぼ全体を仕切っている脳幹と、この三者の間には、常にせめぎ合い・軋轢があります。
辺縁系で「辛い。」という感情が湧き出ていても、新皮質が「今は我慢して頑張らなきゃいけない。」と駆り立てる、というような具合に。
脳幹が「もう疲れたから眠りたい。」と眠気を起していても、新皮質が・・・・・・・てな時も。
「私の夢は〇〇〇〇〇になることだ。」と気持ちよく思っても、「そんなの無理よ。」と言われて、新皮質が「今の自分を考えたら、やはり無理か。」と妥協する。
脳のそれぞれの部位は、お互い矛盾を抱えながら、生きています。
それがストレスの元であり、酷くなったらトラウマになる。
つまり、本来高性能であるはずの私達人間の脳。しかしその能力(脳力)は封じ込められ、抑え込まれています。その理由は、脳の中で起きるこの矛盾。
元々私達の脳は、この矛盾・軋轢を抱えてしまっているのだと。
ところが、そうではなかったということを、私は30年くらい前に知る機会がありました。
人間の脳には、脳自身が抱えるこの矛盾を解消・昇華し、脳を本来のハイスペックな状態にするメカニズムが備わっていたのです。
それは間脳。
間脳こそが、論理的な思考を支えながら、統合的認識力、直感やインスピレーション・創造性・独創性、予知や共感・共鳴、深い精神性、高次元に対する認識力、望ましいイメージ想起力、審美的センス・芸術的センスなどなど、高次の脳活動を実現する中核であったのです。
今をときめく、プラスマインドやレジリエンス,願望達成力やコミュニケーション力なども、間脳が機能してこそです。
健康で長寿の人は、間脳が機能している。トップアスリートも、成功している実業家も、素晴らしい芸術家も・・・・・・みんなそう。
間脳のことを知ったのは30年くらい前でしたけど、その物凄い意味に気づけたのは、最近なのです。これまた、情けないことで。
そして、気づいたところで、運動で間脳の働きを刺激する方法が見えてきたのです。