【コラム】スポーツ選手のストレスとケガ
第16回 脳の働きとメンタル、コーチング(頭と心の使い方)
吉備国際大学社会科学部学部長・教授
公益財団法人日本健康スポーツ連盟認定プロフェショナルトレーナー
一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長
竹内 研
私が脳に関心を持ったのは、大学時代でした。
きっかけはある偉大な宗教家の著書。時実利彦先生の『脳の話』という、エポックメイキング的な書籍の存在を知ったりして、初めて脳に興味を持ったのです。
同時に、フロイドを始祖とする精神分析、つまりは深層心理学にも。
「へぇ~、人間の思考や感情や行動を、言ってしまえば人生をも決めているのは、その人の潜在意識なのかぁ。」と妙に納得。
大学の授業では、こうしたところは教授されないのは当然で、私はここでも、大学の講義内容以外に、引き寄せられてしまった。
でも、「そう言えば、自分が経験した、自分でも解らない内に、勝手に体が動いて、相手に対応してしまったのは、潜在意識と関係あるかもな。」と自分の中で腑に落としたり。
当時は、こうした知識も世に紹介され始めたところでした。
潜在意識は自分で自覚できないだけに、今の時代でも、多くの人にとって、本当には実感を伴って腑に落ちてはいないでしょうね。研究レベルでも、実験的に確認できるものでないだけに。
しかし、時代を経るほどに、例えば臨床心理分野や精神科領域では、潜在意識の働きを認めざるを得ないという方向に進んできました。
話は変わりますが、私は長年アスリートのコーチをやってきました。
一番やったのは、以前にも述べた、最も私に不似合いなエアロビック。
アスリートのコーチをする上で、当然ながらメンタル面は軽視できない。私もある時点から、本格的にメンタルについて学ばざるを得なくなりました。
というのも、選手のメンタルに目を向けざるを得なくなったと同時に、「指導者である自分自身のメンタルが大丈夫か?」と思わざるを得なくなった!
という訳で、メンタルのコーチングという分野が発展してきたという事を知りました。コーチングとは「頭と心の使い方」。メンタルトレーニングという分野もあるけれど、脳科学の著しい発展によって、人間の認知機能などがさらにさらに解明されてきて、それらをバックボーンとして、コーチングとして成り立ってきました。
私がコーチングに出会ったのは、アラフィフという言葉がありますが、まあだいたいその頃。
若かりし頃から潜在意識とかに惹かれた者としては、コーチングには大いに引き付けられました。「脳の働き方」として、凄く納得する事多々。コーチングの専門家としての国際的資格も取得し、自分とアスリートの指導に使いました。その効果はしっかりと実感しました。
ここでも、メンタルそしてコーチングのセミナーなどの講師として、あちこち駆け周ったりも。
だから、この時代の私のこうした面を知る人は、メンタルの専門家と思ってくださっています。
ちょうどコーチングに取り組んだ時期と同時期に、「身体をゆるめる」という事との出会いがありました。
元来の気張るタイプ・力むタイプ。それを感じるがあまり、ずっと脱力することへの憧れを持ちながら、自分を変えられないまま、歳を重ねてしまった。
私も幾多の、脱力だとか、リラックスだとかを唱える理論や方法を目にしてきましたが、それらのどれをとっても、上手くいかなかったり、不十分であったり。
何故かというと、「ゆるむ」ということのメカニズムであったり、その奥深さであったりが、きちんと捉えられていなかったからでしょう。
今から思うと、かつては体系的に、システムとして、「ゆるんだ身体」を造る理論とメソッドが存在しなかった!