【コラム】スポーツ選手のストレスとケガ

第13回 アスリートの身体意識について

吉備国際大学社会科学部学部長・教授
公益財団法人日本健康スポーツ連盟認定プロフェショナルトレーナー
一般社団法人日本メディセル療法協会理事・学術委員長

竹内 研

アスリートの身体意識については、実に膨大な内容があります。
逐次、お伝えできたらと思います。

まずは、なんと言っても、身体意識のベースは、「身体のゆるみ」。
サッカーの日本代表とスペインの対戦を観ていると、スペインと日本の選手では、このゆるみの度合いに、明らかな隔たりがありました。
もちろん、昔の日本の選手に比べたら、例えば三浦カズ…今の選手の方が良いですが、それでも。
スペインの選手は、「タラ~っと垂れた」感じが観て取れました。
レベルの高いアスリートほど、この垂れた感じを備えてます。

マイケル・ジョーダン、ウサイン・ボルト、サッカーではジダンやメッシ。アントニオ猪木もプロレスラーの中では、これがありました。モハメド・アリも。
武術家では、やはり宮本武蔵。王興薺も。
日本の近代の武術家では、佐川幸義。
こうした人達の写真でも観れば、垂れた感じを掴めます。

ゆるみ度の差は、その人の身体が、細部に渡って、どこまで各組織の機能を運用できるかということに関わります。つまり、固まった身体は、本来持っている組織の機能を活用できない。
レベルの高いアスリートほど、活用度が高い。
そして重要なのは、どれだけゆるんでいるかは、脳の機能そのものということ。

だから、ゆるんでいる選手ほど、創造的・独創的・大局的・予知的な思考や判断などが可能です。
日本のサッカー選手の認知的な面の水準は、このあたりがネックかなと。
監督やコーチもしかり。
彼らの頭脳の働きは、彼らの身体のゆるみ度を観れば、概ね解ります。
日本の選手は、昔よりはゆるんでいるといっても、まだまだ身体の表層に、型にはまった様な、フレームの様なものを残してます。
これは単に、トレーニング方法の間違い。
特に、体幹トレーニングやファンクション体操などの、方法論的取り違えに因ります。
あのフレームが有る限り、世界のトップとは差が縮まらない。

スペインの選手は、日本の選手よりも重心位置が適正な選手が多かったです。
この場合の重心とは、足裏のどこに乗れてるか。
この位置の差は、サッカーのすべてのプレーに影響が及びます。フットワーク、動き出し、相手との間合い、相手の動きの読み、そしてボールコントロール。
ちなみに、柔道の大野は、この重心位置が素晴らしかったです。だからこその、オリンピック二連覇。
サッカー日本代表の選手は、もっと股関節の意識を開発しなくては。これも以前よりは良いんだけど、まだまだ世界のトップとは差があります。
昨今広まってる股関節のトレーニングでは、本当の股関節の意識と機能は開発されません。
そして、股関節の意識は、メンタル面や認識にも、影響が大きいのです。

こうした身体意識は、トレーニングによって、確実に開発・向上させることができます。
身体意識は様々確認されています。トップアスリートとは、こうした身体意識が、偶然にも備わった人達なのです。
でも、たとえ凡人でも、こうした身体意識をトレーニングによって養うと、その域に近づいていけます。

身体意識から読み解くと、競技の結果はとっても良く予測できて、当たります。
陸上男子1500メートルと男子マラソン、選手の誰も知らない予備知識ゼロで、スタート直後に優勝者を予測して当たりました。
その違いも、身体意識で説明できます。

誰でも、身体意識を感じて読み取ることができれば、解ります。
身体意識には、はっきりとした要素が明らかになっています。
そして、選手を強くするのに、身体意識を作ってあげて、身体意識を向上させてあげるのが、一番早く強くなって、苦がなく、コンディションとメンタルも良くなって、選手のその後の生き方にもプラスになります。

それを「メディセル」も使って、多くの選手とコーチ・トレーナーに伝えてあげるのが、急務だと思っています。

2021-08-08